位牌の値段はなぜ違う?費用相場と、失敗しないための3つのポイントを専門家が解説

【はじめに】

「お店によって、位牌の値段が全然違うのはなぜ?」
「安い位牌と高い位牌、具体的に何が違うんだろう?」
「できるだけ費用は抑えたいけど、安すぎるのも不安…」

位牌を選んでいると、その価格の幅広さに驚き、多くの方がこうした疑問を抱えます。

こんにちは。「仏具の教科書」のスギです。
この記事では、16年以上仏具に携わる私が、位牌の価格が決まる仕組み具体的な費用相場、そして後悔しない位牌選びのための3つのポイントを、プロの視点から包み隠さずお話しします。

価格の裏側にある「理由」を知れば、あなたはもう値段に惑わされることなく、自信を持って、ご予算と想いに合った最高の一本を選ぶことができます。

なぜ、位牌の値段はこんなに違うの?価格を決める「4つの製造工程」

一見同じように見える位牌でも、価格が大きく異なるのには、その製造工程に大きな違いがあるからです。特に高品質な国産位牌は、以下の4つの専門的な工程を経て、丁寧に作られています。

1. 「木地(きじ)」- 品質を左右する、最初の工程

位牌作りは、まず土台となる木材を選ぶ「木地」から始まります。

  • 高価な理由 良質な国産材(ヒバなど)を選び、数年間も自然乾燥させた後、さらに人工乾燥を行うなど、木が反ったり割れたりしないための、非常に時間と手間のかかる下準備がされています。熟練した職人が、完成後の木目まで計算して木材を選別します。
  • 安価な場合 乾燥が不十分な木材や、木目が考慮されていない木材が使われることがあり、数年後に歪みなどが発生するリスクがあります。

2. 「下地(したじ)」- 塗りの美しさを決める、見えない工程

木工加工を終えた木地の上に、漆を塗るための土台を作るのが「下地」です。

  • 高価な理由 何度も下地を塗り重ね、その都度研磨することで、鏡のように滑らかで、漆がしっかりと定着する完璧な土台を作り上げます。この見えない部分の手間が、10年後、20年後の塗りの輝きを決定づけます。
  • 安価な場合 この下地の工程が簡略化されていることが多く、塗りの耐久性や深みに大きな差が出ます。

3. 「塗り(ぬり)」- 職人の技が光る、漆の工程

下地の上に、漆を塗り重ねていきます。伝統的な「会津塗り」の技が最も発揮される部分です。

  • 高価な理由 熟練した職人が、天然の漆を使い、「中塗り」「上塗り」と何度も丁寧に塗り重ねます。これにより、吸い込まれるような深く、艶やかな黒が生まれます。
  • 安価な場合 合成樹脂塗料が使われたり、塗りの回数が少なかったりします

4. 「加飾(かしょく)」- 位牌に品格を与える、装飾の工程

最後に、位牌に装飾を施す「加飾」です。

  • 高価な理由 金箔貼りや、金粉で絵柄を描く「蒔絵(まきえ)」といった、非常に高度な技術を持つ専門の職人が、一つ一つ手作業で行います。特に、細かい金粉で美しいグラデーションを描く会津の伝統技法は、位牌に圧倒的な品格を与えます。
  • 安価な場合 金箔の代わりに安価な塗料が使われたり、印刷されたシールが貼られたりすることもあります。

【種類別】本位牌の費用相場一覧

では、具体的にどれくらいの費用がかかるのか。一般的な費用相場を、位牌の種類別にご紹介します。

位牌の種類費用の目安(本体価格)主な特徴
唐木位牌1.5万円 ~ 10万円木材の種類(黒檀・紫檀など)で価格が変動。
塗り位牌2万円 ~ 20万円以上塗りの工程数や蒔絵の有無で価格が大きく変わる。
モダン位牌1.5万円 ~ 15万円デザインや素材(クリスタルなど)によって様々。

※上記に加えて、文字彫り代として別途5,000円~1万円程度かかる場合があります。(価格に含まれているお店もあります)

【プロの視点】「安い位牌」を探す前に、一度だけ考えてみてほしいこと

ここまで価格の仕組みについてお話してきましたが、ここで少しだけ、私の個人的な、そして専門家としての「想い」をお伝えさせてください。

もちろん、ご予算は非常に大切です。しかし、位牌選びを単なる「買い物」として、「いかに安く済ませるか」という視点だけで進めてしまうと、後々、心に小さな棘(とげ)が残ってしまう可能性があることを、私は仕事柄、何度も見てきました。

ぜひ一度、ご自身に問いかけてみてほしいのです。

「これは、自分を育ててくれた、大切な親の位牌だ」
「これから先、10年、20年、50年と、毎日自分が手を合わせ続けるものだ」

そう考えた時、数万円の差が、本当に大きなものでしょうか。

位牌は、故人を敬うあなたの「気持ちをかたちに」できる、たった一つの、そして最も大切な仏具です。
手を合わせるたびに、「ああ、良い位牌を選んであげられて、本当に良かった」と、心から思える。そんな、あなた自身が満足し、誇りに思える一本を選んでいただくこと。

それが、故人への最高の供養であり、残された私たち自身の心の平穏にも繋がると、私は信じています。

【本質】位牌選びで失敗しないための「3つのポイント」

価格だけで判断すると、後悔に繋がることがあります。末永く、心から手を合わせられる一本を選ぶために、本当に大切な3つのポイントをお伝えします。

ポイント①:まず「国産」にこだわる

これが最も重要な「失敗しないためのポイント」です。
海外製の安価な位牌は、数年で塗りが剥げたり、木が歪んだりするリスクがあります。その度に買い替えていては、結果的に高くついてしまいます。
日本の気候風土を熟知した職人が、良質な素材で作った「国産位牌」を選ぶこと。それが、10年、20年という長い目で見た時に、最も価値のある選択だと、私は断言します。

ポイント②:装飾より「本質」を見極める

高価な蒔絵などの装飾がなくても、質の良い位牌は、そのりの深み木目の美しさだけで、十分に気品があります。過度な装飾に惑わされず、位牌の本質的な品質の高さに目を向けることで、ご予算内で、本当に価値のある一本を見つけることができます。

ポイント③:状況に合わせて「まとめる」という知恵を持つ

ご先祖様の位牌がたくさんあり、それぞれを新しく作り直すと大きな負担になります。そうした場合は、複数のご先祖様を一つにまとめられる「繰出位牌(くりだしいはい)」「過去帳(かこちょう)」を検討しましょう。費用を抑える、というだけでなく、お仏壇の中をすっきりと整える、非常に賢い選択です。

【FAQ】位牌の値段に関する、よくあるご質問

文字彫り代は、なぜ別途かかることがあるのですか?

お店の方針によりますが、位牌本体の価格と、文字を彫る職人の技術料を、別々に設定している場合があるためです。最近は「文字彫り代込み」の価格表示も増えていますので、総額でいくらになるかを必ず確認しましょう。

夫婦の位牌を一つにまとめる「夫婦位牌」は、費用を抑えられますか?

はい、抑えられる場合が多いです。位牌を二本作るよりも、一本の位牌にお二人の戒名を連名で彫る「夫婦位牌(めおといはい)」にする方が、費用を抑えることができます。ただし、お寺様によっては一人一本という考え方の場合もありますので、事前にご相談されるとより安心です。

インターネット通販の位牌は、なぜ安いのですか?

人件費や店舗の維持費がかからない分、価格を抑えることができるためです。ただし、その多くは海外製であったり、材質が不明瞭であったりする場合もあります。もしネットで購入される場合は、「原産国(国産か海外製か)」や「材質」が明確に記載されている、信頼できるお店を選ぶことが非常に重要です。

【まとめ】価格の理由を知り、価値で選ぶ

位牌の値段の違い、お分かりいただけたでしょうか。

  • 素材、加工、生産国、デザインの4要素で価格は決まる。
  • 安さだけで選ぶと、後々後悔する可能性がある。
  • 国産でシンプルなデザインを選ぶのが、失敗しないための賢い選択。

一番大切なのは、価格の裏側にある「理由」を理解し、あなたがその価値に心から納得できる一本を選ぶことです。
この記事が、あなたの後悔のない位牌選びの羅針盤となれば、これほど嬉しいことはありません。


「具体的にどんな位牌があるのか、デザインを見てみたい」
そう思われた方は、こちらの記事で私がプロの目で厳選したおしゃれなモダン位牌を紹介しています。ぜひご覧ください。

⇒【モダン位牌】リビングに合うおしゃれなデザイン10選|仏具店員が厳選

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この記事を書いた人

スギのアバター スギ 主任仏具コーディネーター

老舗仏具店にて16年以上勤務中。国宝寺院、重要文化財寺院、担当。仏壇、仏具、荘厳のプロ。

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