【はじめに】感謝を込めて、お仏壇の役目を終える
「実家を片付けることになったが、お仏壇はどうすれば…」
「引っ越し先に、大きすぎて持っていけない…」
「継承者がおらず、自分の代で仏壇を終えたい…」
様々な理由で「仏壇じまい」を考えなければならない時、多くの方が途方に暮れてしまいます。

しかし、ご安心ください。
仏壇じまいは、決してネガティブな行為ではありません。
長年、家族の祈りを受け止めてくれたお仏壇に、感謝を込めて、その役目を終えていただく。これは、とても丁寧で、尊い供養の形なのです。

こんにちは。「仏具の教科書」のスギです。
この記事では、仏具のプロである私が、仏壇じまいの具体的な手順、費用の相場、そして絶対にやってはいけない注意点まで、あなたの不安がなくなるよう、一つずつ丁寧に解説します。
1. 仏壇じまいとは? なぜ必要になるのか
仏壇じまいとは、ご自宅に安置されているお仏壇を、適切な供養の手順を経て片付けることです。単なる「家具の処分」とは全く意味が異なります。
近年では、以下のような理由で、仏壇じまいを検討される方が増えています。
- 住環境の変化: 引っ越しや家の売却、リフォームなど。
- 継承者の不在: お仏壇を守っていく子や孫がいない。
- 供養の形の多様化: よりコンパクトな仏壇への買い替えや、納骨堂など、新しい祈りの形への移行。
2.【全体像】仏壇じまいの流れ・4つのステップ
仏壇じまいの基本的な流れは、以下の4つのステップで進みます。


3. 各ステップの詳しい解説
STEP1:お寺様に相談し、日程を決める
まず、菩提寺(お付き合いのあるお寺様)に連絡し、「仏壇じまいを考えている」旨を相談します。そして、STEP2で行う「閉眼供養」の日程を調整します。
※もしお付き合いのあるお寺様がいない場合は、仏具店などに相談しましょう。お寺様への取り次ぎや、ご紹介をしてくれます。
STEP2:閉眼供養(へいがんくよう)を執り行う
ご本尊、お位牌、お仏壇を動かす前に行う、重要な儀式です。
【プロの視点:閉眼供養の本当の意味】
「お仏壇から魂を抜く」といった説明を聞いたことがあるかもしれませんが、それはあくまで分かりやすい比喩表現です。ご本尊やお位牌に魂が入ったり出たりすることは、一切ありません。
閉眼供養とは、長年手を合わせてきた礼拝の対象に対して、「今までありがとうございました」と感謝を伝えて区切りをつけるための、私たち生きている人間のための儀式です。
何も不安になることはありません。万が一、「特別な力で魂を抜く」などと言って高額なお布施を要求する業者がいれば、それは詐欺の可能性が高いので、くれぐれもご注意ください。
[⇒【位牌の魂入れ・魂抜き】は間違い?の記事で、閉眼供養について詳しく解説しています]
STEP3:仏壇の中を整理・仕分けする
閉眼供養を終えたら、中のものを整理します。「お寺様にお返しするもの」「ご自身で保管するもの」「処分するもの」に仕分けましょう。
- ご本尊(仏像や掛軸)・お位牌: お寺様にお返しするのが基本です。必ず事前にご相談ください。
[⇒【古い位牌はどうする?】の記事で詳しく解説しています] - 貴重品など: 現金や貴金属、写真など、大切なものがないか、処分する前に必ず最終確認をしてください。
- その他の仏具: 状態の良いものは、新しい祈りの場で使い続けることもできます。処分する場合は、自治体のルールに従います。
STEP4:仏壇本体の引き取りを依頼する
仏壇の中が空になったら、本体の処分を依頼します。主な依頼先は以下の通りです。
- 購入した仏具店
- 専門の処分業者
- お寺様(対応してくれる場合)
【最重要:悪質な業者に注意!】
仏壇の引き取りを業者に依頼する際、「うちで供養も一緒にやりますよ」と言う業者には注意が必要です。
閉眼供養を行えるのは、僧侶の資格を持つお寺様だけです。仏具店や処分業者が行うことはできません。
もし業者が「供養します」と言った場合は、「どこのお寺の、どのご住職が来てくださるのですか?」と必ず確認しましょう。その質問に明確に答えられない業者は、詐欺の可能性があります。あなたの清らかな気持ちが、ビジネスの道具にされないように、くれぐれも気をつけましょう。


4. 費用の全知識|総額でどれくらいかかる?
費用の内訳 | 金額の目安 | 備考 |
---|---|---|
閉眼供養のお布施 | 1万円~5万円 | お寺様や地域によって異なります。 |
仏壇の引き取り・処分費用 | 2万円~8万円 | 仏壇の大きさや材質、地域によって変動します。 |
合計 | 約3万円~13万円 |
【重要】仏壇じまいで「やってはいけないこと」
これだけは絶対に避けてほしい、という注意点を2つにまとめます。


- 閉眼供養をせずに、粗大ゴミとして出すこと
→ 仏壇は、長年家族の祈りの中心であった尊い場所です。感謝を込めて、必ず閉眼供養を行いましょう。これは、残された私たちの心のけじめのために、何よりも大切なことです。(※多くの自治体では、仏壇の回収自体を行っていません) - 資格のない業者に、供養を依頼すること
→ 閉眼供養は、必ず僧侶の資格を持つお寺様にお願いしましょう。
【まとめ】
仏壇じまいは、単なる「処分」ではありません。
長年、家族を見守ってくれた大切な場所への「感謝の儀式」です。
正しい手順で丁寧に行うことで、あなたの心も晴れやかになり、新しい供養の形へと、気持ちよく踏み出すことができます。


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