「位牌と墓、どっちも必要なの?」
ご家族を亡くされたばかりの方や、これからお墓のことを考え始めようとしている方から、よくいただく質問です。仏具店に勤める私自身、この質問には様々な想いが交錯します。故人を偲び、供養したいという気持ち、一方で、経済的な負担や、将来のことを考えると迷われる方も多いからです。
この記事では、仏具店員の立場から、位牌と墓の役割、それぞれの特徴、そして現代における供養の多様性について、わかりやすく解説していきます。
創業60年以上の老舗仏具店で15年以上勤務。現在も現役の仏具店員として勤務中。国宝寺院、重要文化財指定寺院などにも出入りしています。このような経験から、専門家としての目線から正しいアドバイスしていきます。
「結論」
まず結論から申し上げますと、“位牌”も”墓”もどちらも必要です。それぞれ役割が違い、どちらか片方だけでいいというものではありません。
しかしながら、位牌や墓がないからと罰則や罰金があるわけでもありません。倫理観と宗教的に見たときに必要性が高いということになります。
「位牌とは?」
位牌とは、一般的に、戒名、故人の名前、没年月日などが刻まれ、仏壇に安置されます。亡くなって四十九日までは、白木製のものを使用し、四十九日後は本位牌に変わり安置していきます。
仏教では、位牌に故人の魂が宿ると考えられています。そのため、位牌に向かって手を合わせ、供養を行うことが一般的です。位牌は、私たちが故人を偲び、手を合わせるための具体的な対象となります。
「墓とは?」
墓とは、故人の遺骨を安置する場所です。一般的には、墓地や霊園に建てられます。
故人の遺骨を納めるための場所として、墓は重要な役割を果たします。
墓は、家族が集まり、故人を偲ぶ場所でもあります。
地域社会とのつながりを象徴するものでもあります。地域によっては、お盆にお墓に集まり特有の習わしを行うところもあります。
「位牌と墓、どちらが大切?」
「位牌と墓、どちらが大切なの?」という質問に対する答えは、一概には言えません。そもそもそれぞれ役割が違います。
位牌の役割: 位牌に手を合わせ、故人を供養する。故人の生きた証として、感謝の気持ちを形として現すことができる。先祖から命を繋いでもらったことを形として現し、子孫に伝えることができる。
墓の役割: 故人の遺骨を安置し、永く供養したいという方。個人を尊重し、亡くなった方たちを具体的に残したいという気持ちを現すことができる。
「現代における供養の多様性」
現代では、従来の墓や位牌だけでなく、様々な供養の形があります。
・納骨堂: 霊園やお寺様が管理する場所で、納骨壇という形で納骨する。
・樹木葬: 故人の遺骨を樹木の根元に埋葬する。
・散骨: 故人の遺骨を海や山に散骨する。
・永代供養: 寺院などが、遺骨を永く供養する。
・自宅での供養: 自宅で故人を偲ぶ。
「仏具店員からのアドバイス」
- 家族で話し合う: 故人を尊重し、供養の方法について、家族で話し合い、合意形成を図りましょう。
- 無理のない範囲で: 経済的な負担や、将来のことを考慮し、無理のない範囲で供養を行いましょう。
- 専門家に相談する: お寺様や仏具店、石材店など、専門家に相談することをおすすめします。
「まとめ」
位牌と墓は、どちらも故人を偲び、供養するための大切なものです。どちらが重要かではなく、それぞれの役割、そのものが違います。位牌も墓も必要なものです。しかし、今を生きる人を蔑ろにして作るものでもありません。
ご家族にとって、そして故人にとって、どのような供養がふさわしいのかをじっくりと考えることが大切です。形や様式は変化しても供養する気持ちは変わりません。故人を尊重し、より感謝の気持ちが伝わる方法を見出だしていただけたらと思います。
この記事が、皆様の供養の参考になれば幸いです。
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