【はじめに】
お仏壇で安置し、長く手を合わせてきた大切なご先祖様の古い位牌。
「古くなって傷んできた…」「継承者がいない…」「複数の位牌を一つにまとめたい…」
様々なご事情から、「この位牌、どうすれば良いのだろう」と、悩んでいらっしゃることと思います。
これは、ただの「処分」ではありません。
ご先祖様への感謝を込めて、敬意をもって行う、残された私たちにとっての、大切な「けじめ」の儀式です。
こんにちは。「仏具の教科書」のスギです。
この記事では、そんなあなたの不安な気持ちに寄り添いながら、古い位牌をどう整理すれば良いのか、具体的な方法と流れ、費用の相場まで、専門家の視点から分かりやすく解説します。
この記事を読めば、あなたとご家族が心から納得できる、最善の方法が必ず見つかります。
※ご注意:浄土真宗本願寺派(お西)、真宗大谷派(お東)の宗派は、位牌を用いないため作法が異なります。
なぜ、古い位牌を「整理」する必要があるのか?
まず、位牌を整理することは、決してご先祖様に対して失礼なことではありません。むしろ、節目節目で敬意を払い、供養の形を整える、非常に丁寧な行為です。
一般的に、以下のような場合に位牌の整理を検討します。
- 三十三回忌や五十回忌を終えた時
→「弔い上げ(とむらいあげ)」と言い、故人の年忌法要に一区切りをつけるタイミングです。イチ故人としての供養はここで節目を迎えますが、以降はご先祖様として、引き続き手を合わせていきます。(※必ずこの回忌で終わらせるという決まりではありません) - 位牌が古くなったり、傷んだりした場合
→ 新しく作り直すことで、改めて故人への敬意を表します。実は、位牌は同じ内容で何本作っても問題ありません。ご自宅用、納骨堂用、ご兄弟用など、必要に応じて作り直すことができます。 - 複数の位牌を一つにまとめる時
→ ご先祖様の位牌が増えてきた際に、「繰出位牌(くりだしいはい)」や「過去帳(かこちょう)」にまとめることがあります。
【プロの視点】弔い上げを終えたご先祖様は「過去帳」へ、まだ年忌法要が続くご先祖様は「繰出位牌」へと移すのが一般的です。 - お仏壇に手を合わせる人がいなくなった時
→ 継承者がおらず、誰も管理できなくなる場合は、放置してしまう前に、お寺様に相談してお焚き上げや永代供養をお願いするなど、次の形を考えます。
古い位牌を整理する、3つの具体的な方法
ここから具体的な方法を解説しますが、その前に大切な心構えをお伝えします。
「お焚き上げ」や「永代供養」は、位牌をお寺様に押し付けて終わり、という意味ではありません。「お焚き上げ」は、長年手を合わせてきたものへの感謝を込めて丁寧に弔う方法の一つ。「永代供養」は、自分たちに代わって、修行を積んだお寺様が故人のために祈る機会をいただく、ということです。この想いを根底に、読み進めてください。
方法①:お寺様に相談し、「お焚き上げ」をしてもらう(最も一般的)

これが最も伝統的で、丁寧な方法です。
- STEP1:閉眼供養(へいがんくよう)を行う
まず、菩提寺(お付き合いのあるお寺様)に連絡し、「閉眼供養」をお願いします。
【プロの視点】昔からの言葉の名残で「魂抜き(たましいぬき)」と言う場合もありますが、実際に魂を出し入れするなどということは一切ありません。昔、目に見えないものへの恐怖に囚われる人々を導くため、お寺様が便宜上使っていた言葉が現代に残っているのです。正式には「閉眼供養」と覚えておきましょう。 - STEP2:お焚き上げをしてもらう
閉眼供養を終えた位牌を、お寺様にお預けし、供養として焼いていただきます。これを「お焚き上げ」と言います。(※お寺様によっては、読経のみ行い、焼却は提携の仏具店などが行う場合もあります)
方法②:信頼できる仏具店に「取次」を依頼する
菩提寺が遠方などの場合は、信頼できる仏具店に相談しましょう。お寺様との繋がりから、閉眼供養などの「取次(とりつぎ)」を案内してくれます。

【最重要:悪質な代行サービスに注意!偽坊主の被害に遭わないために】
なぜ、私がここまで強く「資格を持つお寺様」にこだわるのか。
それは、何を隠そう、私自身が祖母の葬儀で「偽坊主」の被害に遭った、悔しい経験があるからです。
宗派を偽り、正式な作法ではない葬儀を行ったにも関わらず、非を認めず、高圧的な態度を取る。そんな悲しい現実に、私も直面しました。故人を敬う大切な儀式だからこそ、事を荒立てられず、泣き寝入りするしかない、その悔しさは痛いほど分かります。
だからこそ、私はあなたに同じ思いをしてほしくないのです。
安価なサービスの中には、僧侶の資格がない人が形だけの読経をしたり、録音した音声を流したりするだけの、詐欺に近い行為も存在します。
「亡き人をご縁に仏法に触れ、ちゃんとした形で弔いたい」というあなたの清らかな気持ちを形にするためにも、必ず資格を持つお寺様(または、そこへきちんと取次してくれる仏具店)に依頼しましょう。
方法③:「永代供養」を依頼する
継承者がいないなどの理由で、今後の供養そのものを任せたい場合に選ばれる方法です。お寺様に依頼し、ご先祖様を永代にわたって供養していただきます。形式はお寺様によって様々ですので、事前にしっかり相談しましょう。

気になる費用は?それぞれの相場を解説
【プロの視点:お布施の考え方】
下記の費用はあくまで目安です。「お布施」は本来、金額が決まっていない施しです。それは、お寺様が24時間365日、私たちの見えないところでも仏法のために尽くしてくださっていることへの感謝の気持ちであり、また、収入が様々な各家庭への配慮でもあります。これらの背景を少し心に留めて、お布施を準備されると良いでしょう。
項目 | 費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
閉眼供養のお布施 | 1万円~5万円以上 | お寺様や地域によって異なります。 |
永代供養の費用 | 10万円~ | 内容により大きく異なります。要相談。 |
※これらはあくまで目安です。必ず事前にお寺様にご確認ください。
【最重要】自分でゴミとして処分しては絶対にいけない理由
「閉眼供養さえすれば、自分で燃えるゴミに出してもいいのでは?」
それは絶対に避けてください。理由は、「ご先祖様への敬意を欠く行為だから」です。
位牌は、私たちの気持ちを形に表したものであり、長年手を合わせてきた感謝の対象です。それをゴミとして処分することは、「私には感謝の気持ちがありません」と、自分から言っているようなものです。
正しい手順で供養することは、残された私たちが、心の平穏を得て、晴れやかな気持ちで前に進むために、何よりも大切なのです。
【まとめ】感謝を込めて、次の「かたち」へ
古い位牌の整理は、「捨てる」ことではありません。
これまで見守ってくださったご先祖様への感謝を込めて、次の供養の「かたち」へと、敬意をもって移行していただくための大切な儀式です。
どの方法が最適か、ご家族でよく話し合い、お寺様や信頼できる仏具店に相談することが、後悔のない選択への第一歩です。
この記事が、あなたの心の重荷を少しでも軽くするお手伝いができれば幸いです。

複数の位牌を一つにまとめ、新しい位牌の準備を考えている方は…
こちらの「完全ガイド」で、本位牌の作り方を詳しく解説しています。ぜひ合わせてお読みください。
コメント