【はじめに】
「私も、身近で母親を想い手を合わせたいんです」

こんにちは。「仏具の教科書」のスギです。
先日、お店で位牌を作りに来られた、あるお客様が、切実な想いを打ち明けてくださいました。(※このエピソードは、お客様から許可を得て掲載しています)
その方は、就職のために故郷を離れ、遠方で暮らしていらっしゃいました。数年前に亡くなられたお母様は、ご自身が幼いころから病気がちだった時、いつでも優しく看病してくれた、大好きな存在だったそうです。
実家にはお仏壇があり、お母様の位牌もあります。ご遺骨も納骨堂にあり安心なのですが、物理的な距離があるため、お参りできる機会はどうしても限られてしまう。
その切実な想いに、私が一つの選択肢としてご提案し、大変喜んでいただけたのが「手元供養」でした。


手元供養の前に知ってほしい「祈りの本質」
手元供養の具体的なお話しの前に、仏具の専門家として、まずお伝えしたい大切なことがあります。
祈りの本質を考えた時、最も完成された形は、ご本尊様・お位牌・仏具が揃った「お仏壇」という祈りのシステムを通じて、日々手を合わせることです。
お仏壇や仏具は、私たちの気持ちを「かたち」にするための、先人たちが遺してくれた、非常に完成された素晴らしい道具です。
しかし、現代の暮らしの中では、費用や住宅事情で、どうしてもお仏壇を置くことが難しい場合があるのも事実です。
「手元供養」は、その「祈りの本質」を大切にしながら、特別なご事情を抱える方々のために生まれた、故人を敬う気持ちに寄り添う、もうひとつの方法なのです。


この記事では、その「手元供養」について、具体的な方法と、後悔しないためのポイントを解説します。
1. 手元供養とは?
手元供養とは、お仏壇を置くことが難しい、またはお墓や納骨堂が遠方にあるといったご事情から、故人のご遺骨の一部(分骨といいます)を、ミニ骨壺やアクセサリーといった小さな器に移し、自宅で保管したり、身に着けたりして供養する方法です。
2.【種類別】手元供養の具体的な方法と費用相場
① ミニ骨壺(ミニ骨壷)


- 特徴:
手のひらに収まるほどの、デザイン性の高い小さな骨壺です。陶器、ガラス、金属、木製など素材も様々で、一見して骨壺とは分からない、おしゃれなものが増えています。 - 費用目安: 1万円~5万円
- プロの一言: リビングの棚など、祈りの空間を設えたい方に最適です。
⇒ 楽天で、暮らしに溶け込む「ミニ骨壺」を探す
② 遺骨アクセサリー


- 特徴:
ペンダント、リング、ブレスレットなどの内部に、ごく少量のご遺骨を納めることができるアクセサリーです。「いつも、どこでも、故人と一緒にいられる」という安心感が、最大の魅力です。 - 費用目安: 2万円~10万円以上
- プロの一言: いつでも故人を身近に感じていたい、お守りのように持ち歩きたい方に。
⇒ 楽天で、想いを繋ぐ「遺骨アクセサリー」を探す
3. 手元供養を始める前に|知っておきたい3つの注意点
新しい供養の形だからこそ、後悔しないために、事前に知っておくべき大切なことがあります。


① 必ず、家族・親族の理解を得る
これが最も重要です。あなたにとっては自然な愛情表現でも、ご親戚の中には「ご遺骨を分けて、家に置いておくなんて」と、抵抗を感じる方がいらっしゃるかもしれません。必ず事前に相談し、全員が納得した上で進めましょう。
② 原則として「分骨」で行う
ご遺骨のすべてを手元供養にするのではなく、大部分はお墓や納骨堂に納め、一部だけを「分骨」して手元に置くのが一般的です。これにより、親族が集まる「公の祈りの場」と、ご自身が日々向き合う「私の祈りの場」の両方を大切にすることができます。
③ 将来、自分が亡くなった後、そのご遺骨をどうするか
少し先の未来の話ですが、とても重要です。あなたがお持ちになっているミニ骨壺やアクセサリーを、将来誰が引き継ぎ、最終的にどうするのか(ご自身のお骨と一緒にしてもらうなど)、ご家族と話し合っておきましょう。
【まとめ】
手元供養は、「故人をいつも身近に感じていたい」という、あなたの純粋で温かい愛情の表れです。
大切なのは、その愛情に、ふさわしい「かたち」を選んであげること。
仏具とは、私たちの感謝の気持ちを目に見える「かたち」にできる、素晴らしい道具です。あなたの温かい気持ちを、どの「かたち」に託すのかを真剣に考える。それこそが、故人への最高の敬意であり、本当の意味での供養なのです。


この記事が、そのための手助けとなれば幸いです。
「手元供養の空間に置く、モダンな位牌も探してみたい」
そう思われた方は、こちらの記事で、私が厳選したお位牌を紹介しています。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 手元供養: ご遺骨の一部を、身近な場所で供養する新しい形。⇒【手元供養】という新しい祈りのかたち […]