- 初めてのお盆、何をしていいか分からない。
- いつ頃までに準備していいか分からない。
- 宗派によってお盆飾りが違うと聞いた。
仏具店員歴16年以上の私が、お客様をご案内する中でよく聞く疑問や、長年の中で培った知識をもとに、初心者がつまずきやすい点とこれさえ押さえれば大丈夫という要点を凝縮しました。
この記事を読めば、以下の全てが分かります。
- 準備を始めるべき最適な時期
- 浄土真宗本願寺派(お西)と真宗大谷派(お東)の飾り方の違い【最重要】
- 意味から選ぶ必須アイテムとプロの選び方
- 迷わない盆棚(精霊棚)の飾り方と省スペース術
無駄なく、失敗なく、お盆を迎えましょう。
【結論】お盆準備は「家紋提灯の納期」から逆算して始めましょう
特に家紋入り提灯は、発注から納期まで約2週間かかるのが標準です。慌てて準備することのないよう、以下の時期を目安に始められることを強くおすすめします。
《8月盆の地域の方》
- 準備開始の目安:7月中旬
- お盆期間:8月13日~16日頃
《7月盆の地域の方》
- 準備開始の目安:6月中旬
- お盆期間:7月13日~16日頃
(※お盆の最終日は地域によって異なります)
【具体的なスケジュール例(8月盆の場合)】
- 7月中旬~8月上旬:【準備】仏具の購入・確認、仏壇の掃除
- 8月12日:【買い出し】生もの(お花、お供え)の用意
- 8月13日(盆の入り):【お迎え】飾り付け、迎え火
- 8月14日・15日(中日):【供養】お参り
- 8月16日(盆の明け):【お見送り】送り火、片付け
【必須アイテム】意味を知れば選び方が変わる
プロだからこそお伝えしたい選び方のコツを解説します。
1. 盆提灯(ぼんちょうちん)
役割: ご先祖様が迷わず帰るための「目印(あかり)」です。
【プロの視点】浄土真宗本願寺派(お西)・真宗大谷派(お東)では「切子灯籠(きりことうろう)」を使います。
これらの宗派では、亡くなった方はお盆に帰ってくるという概念がないため、目印である家紋提灯は不要とされます。その代わりに、仏様の知恵の光を表す装飾として切子灯籠を飾ります。本願寺派(お西)と大谷派(お東)では、使用する切子灯籠のデザインが異なるため、購入の際は必ずご自身の宗派を確認してください。
その他の宗派では、家紋入り提灯や門提灯、回転灯などを用います。
2. 精霊馬(しょうりょううま)・精霊牛(しょうりょううし)
役割: ご先祖様の乗り物です。
- きゅうりの馬:早く帰ってきてほしい、という願い。
- なすの牛:ゆっくり帰ってほしい、という願い。
【プロの視点】: これは地域性が非常に強い風習で、行わない地域も多いです。また、浄土真宗本願寺派(お西)・真宗大谷派(お東)では教義上、飾らないのが正式です。
3. 真菰(まこも)のゴザ
役割: 盆棚に敷くことで「聖なる空間(結界)」を作るための敷物。
【プロの視点】: こちらも精霊飾りと同様に地域性が強く、飾らない地域もかなりあります。また、浄土真宗本願寺派(お西)・真宗大谷派(お東)では使用しません。
4. 麻がら(おがら)と、ほうろく皿
役割: 「迎え火」「送り火」を焚くための燃料と、その器。
【プロの視点】: 浄土真宗本願寺派(お西)・真宗大谷派(お東)では使用しないのが正しいです。理由は、先に書いた通り、帰ってくるという概念がないからです。
5. お供え物(お花・食べ物)
役割: ご先祖様へのおもてなしです。
何を供える?: 故人が好きだったお菓子や果物。そして、最も大切な供養の一つとされ、場を清め華やかにするのが「お花(仏花)」です。
【プロの視点】: 浄土真宗本願寺派(お西)・真宗大谷派(お東)ではお仏壇の中以外で特別に準備する必要はありません。ただし、お仏壇以外に供物台などをもうけて置く分には問題ありません。
【飾り方】基本配置と省スペース術

※浄土真宗以外の一般的な飾り方です
基本配置:この通りに置けばOK!
- 場所: 仏壇横に小机を置き、真菰のゴザを敷く。これが盆棚です。
- 上座(奥): ご位牌を安置。
- 中央: 水の子、お団子、お菓子、果物など。
- 両脇: 精霊馬、精霊牛。
- 外側: 盆提灯。
【プロの技】マンション・省スペースでの飾り方
お仏壇のスライド式の棚(経机)や、少し大きめのお盆(トレイ)の上を「みなし盆棚」として活用します。
全てのアイテムを置けなくても、真菰のゴザの切れ端を敷き、その上に精霊馬と小さなお供えを置くだけでも、立派な精霊棚になります。スペースよりも、設えようとする気持ちが供養です。
【Q&A】これを知ればもう迷わない!
- Q. 浄土真宗ですが、盆提灯など同じ飾り方でいいですか?
- A. いいえ、異なります。浄土真宗本願寺派(お西)・真宗大谷派(お東)では「ご先祖様は既に極楽浄土におられる」と考えるため、迎え火・送り火、精霊馬は不要です。目印の提灯の代わりに、仏様の智慧をあらわす「切子灯籠」を使用するのが正式です。お西とお東では灯籠の形が違うので注意しましょう。
- Q. お供えはいつ下げればいいですか?
- A. 日中にお供えし、その日の夕方には下げて「お下がり」として家族でいただくのが基本です。 食べ物を無駄にしないことも大切な供養の一つです。
- Q. 盆参り(棚経)で、お寺様へのお布施は必要ですか?
- A. 棚経などでお坊様にお勤めいただいた際は、お布施を用意するのがマナーです。金額に決まりはありません。決まっているとそれは「料金」になってしまいます。お布施は、あくまでお寺様への感謝の「施し」です。日頃の感謝を込めて、ご自身の無理のない範囲で気持ちをお金という形でお渡ししましょう。
【まとめ】
お盆準備の要点は以下の通りです。
- 準備は7月盆なら6月中旬、8月盆なら7月中旬から、スケジュールを立てて行う。
- 必須アイテムは宗派による違い(特に浄土真宗本願寺派とお東派)と、それぞれの意味を理解して選ぶ。
- 飾り方は基本さえ押さえれば、スペースに合わせて応用OK。
何よりも大切なのは、ご先祖様を敬い、感謝する心です。その心を形に表して飾ってみてください。この記事が、あなたの心のこもったお盆準備の一助となれば幸いです。
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